睡眠時無呼吸外来

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気です。
当クリニックでは、携帯型装置による簡易検査と経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP シーパップ)等の保険診療を行います。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の定義・疫学

睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)とは、睡眠中に無呼吸を繰り返すことで様々な合併症を起こす病気です。
一晩7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸(10秒以上の呼吸気流の停止)があり、そのいくつかはnon-REM(rapid eye movement)睡眠時にも認められる病態と定義されています。あるいは、1時間当たりの無呼吸の回数を無呼吸指数(apnea index: AI)として表しAI>5を睡眠時無呼吸症候群(SAS)とします。我が国の岡田 保氏らの報告(※)では、男性3.28%、女性0.5%(全体で1.7%、約200万人)と報告されています。

※岡田 保、粥川裕平:疫学.太田保世編.日本人の睡眠呼吸障害.東海大学出版会,東京,1994:147-156.

発症の原因と病態

睡眠時無呼吸の原因は、空気の通り道である上気道(※)が狭くなることにあります。首まわりの脂肪が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満はSASと深く関係しています。口蓋扁桃の肥大、舌が大きいこと、鼻炎・鼻中隔弯曲、あごが小さいこともSASの原因となり、肥満でなくてもSASになります。日本人のSASの約1/4は肥満を伴いません。

睡眠時無呼吸の病態は、睡眠中に出現する上気道の閉塞とそれに伴うガス交換障害(特に低酸素血症)です。一晩中、睡眠‐無呼吸(低呼吸)‐覚醒‐睡眠のサイクルを繰り返すため、良質な睡眠を得ることができなくなります。無呼吸の間は酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が止まるため、血液中の酸素不足や二酸化炭素の貯留が繰り返され、さまざまな臓器に対し悪影響を及ぼします。

※呼吸器(気道)のうち、鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭までを指す。

症状・診断・合併症など

睡眠時無呼吸症候群の症状

SASの代表的な症状はいびきです。いびきは睡眠中に上気道が狭くなっていることを表しています。狭くなるだけでなく完全に閉塞すると無呼吸になります。そのほか夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛、インポテンツ、不眠症などを認めます。日中の眠気は、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害の原因にもなります。

睡眠時無呼吸症候群の診断

問診などでSASが疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて睡眠中の呼吸状態の評価を行います。換気の50%以上の低下、酸素飽和度(SpO2)の4%以上の低下を伴うものを「低呼吸(Hypopnea)」と定義します。

睡眠1時間当たりのAI(無呼吸指数)とHI(低呼吸指数)の合計を無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)と言い、重症度の指標になります。PSGにて、1時間あたりのAHIが5以上であり、かつ症状を伴う際にSASと診断します。軽症5≦AHI<15、中等症15≦AHI<30、重症30≦AHIと定義します。当院ではまず簡易型検査を施行します。精密検査が必要と判断された方は、PSGが施行できる施設をご紹介させていただきます。

睡眠時無呼吸症候群の分類

SASは、空気の通り道である上気道が物理的に狭くなり、呼吸が止まってしまう「閉塞型」と、呼吸中枢の異常による「中枢型」の2つに分類されますが、SASの多くは「閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」です。

<閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome:OSAS)>

胸部や腹部の呼吸運動は行われているにもかかわらず、上気道の閉塞のために鼻、口での呼吸がなく無呼吸となるものです。呼吸再開時に、大きないびきを伴うのが特徴です。1つの無呼吸が中枢型で始まり、後半に閉塞型に移行する混合型睡眠時無呼吸は、閉塞型の一部と考えられています。

<中枢型睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome:CSAS)>

肺、胸郭、呼吸筋、末梢神経に異常がなく、中枢神経系の疾患により呼吸制御系が障害された場合や、呼吸中枢の機能異常により、REM期を中心とした睡眠中に、呼吸筋への刺激が消失して無呼吸となります。脳疾患患者や心不全患者に高率にみられる異常呼吸(チェーンストークス呼吸)は、中枢型に分類されます。

睡眠時無呼吸症候群の合併症

SAS患者には下記のような循環器疾患や、生活習慣病などの合併症を高い確率で引き起こします。

<高血圧>

SAS患者の40~70%に高血圧が合併すると言われています。とくに睡眠時に血圧が低下しないnon-dipper型高血圧が多くみられます。いびきを伴う症例では、SASの存在を疑う必要があります。

<糖尿病>

SAS患者は肥満、非肥満にかかわらず糖尿病、耐糖能異常を合併することが多く、SASは糖代謝異常の発生にかかわる可能性があります。

<虚血性心疾患・脳卒中>

SAS患者には虚血性心疾患を合併する可能性があり、一部では夜間狭心症発作の誘引になることがあります。また、SASが脳卒中(脳梗塞など)の危険因子になるといわれています。重症SAS(AHI≧30)の致死的心血管病変の発症率が有意に高いことが報告(※)されています。

※Marin JM, et al: Lancet 365: 1046,2005.

睡眠時無呼吸症候群の予後

成人のSASでは高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が高くなります。中等度以上では、無治療のまま放置すると予後が不良であると報告されています。He(※)らは246名の無治療のSAS患者をAIが20以下の群(n=142)とAIが20以上の群(n=104)に分け、累積生存率を見ています。AI>20群は明らかに生存率が低く、8年後には平均63%というデータを出しました。

※He J, et al: Chest 94 , 9-14, 1988.

治療方法

肥満者では減量することで無呼吸の程度が軽減することが多く、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが重要です。アルコールは睡眠の質を悪化させるので、晩酌は控える必要があります。睡眠薬の服用も、無呼吸に悪影響を与えます。

経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)

AHIが20以上で日中の眠気などを認めるSASでは、「経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure:CPAP シーパップ)」が標準的治療とされています。CPAPはマスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。

口腔内装置(OA)

中等~重症のOSASの標準治療はCPAPですが、CPAPの継続が困難な方は口腔内装置(oral appliance:OA)による治療が検討されます。これは1種のマウスピースで、就寝時に装着することで下あごを前方に移動させることで上気道の拡大を図る装置です。OAの適応に関しては上気道の形態に影響されるので、適応はOAを作成する医療機関と連携して決定していきます。

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